GSESC-R 児童用一般性セルフ・エフィカシー(自己効力感)尺度

児童用一般性セルフ・エフィカシー(自己効力感)測定尺度は、小学校3年生から6年生の児童・生徒を対象として標準化された質問紙です。セルフ・エフィカシー(自己効力感)は、教育現場だけでなく、医療・看護、産業、スポーツなど、あらゆる分野で重視されるようになった概念です。

小学校3年生から6年生の児童・生徒を対象として標準化された質問紙
著者
  福井 至  (東京家政大学人文学部)
  飯島政範  (さいたま市立本太小学校)
  小山繭子  (足立区医師会)
  中山ひとみ (銀座山崎メンタルクリニック)
  小松智賀  (赤坂クリニック)
  小田美穂子 (横浜市北部児童相談所)
  嶋田洋徳  (早稲田大学人間科学部)
  坂野雄二  (北海道医療大学)
  GSESC-Rマニュアル

    セルフ・エフィカシーは当初、恐怖場面での対処行動の説明に用いられていた(Schunk & Gunn, 2001)。しかしその後、セルフ・エフィカシーが変化すると、さまざまな行動の変容が生じることが明らかとなり、現在では学校教育場面を含め、医療場面、カウンセリング場面など幅広くその概念が適用されている (坂野・前田, 2002)。

学校教育におけるセルフ・エフィカシー

    学業達成場面においてセルフ・エフィカシーを高めることは、動機づけと学業成績に大きな影響を及ぼすことが報告されている (小田, 2002)。また、社会的スキルとの関連も研究されており、適切な対人行動ができるというように社会的スキルのセルフ・エフィカシーが向上すると、実際の社会的スキルも向上することが示されている(戸ヶ崎,2002)。さらに進路選択との関係も研究されており、自分の進路を決断できるという進路選択セルフ・エフィカシーが向上すれば、進路選択行動を積極的に行うようになることが示されている (下村, 2007; 浦上, 2002)。

自己調整学習とセルフ・エフィカシー

    文部科学省の「生きる力」の知の部分の「基礎的な知識・技能を習得し、それらを活用して、自ら考え、判断し、表現することにより、さまざまな問題に積極的に対応し、解決する力」ということは、「自己調整」の段階に進んでいる学習者の持っている力と考えることができる。この「自己調整」段階にまで進めるためには、「観察」「模倣」「自己制御」「自己調整」と段階を進むには、モデルを示して教え、真似をさせ、自分で練習させつつ修正してあげ、セルフ・エフィカシーを十分向上させ、自己調整段階へ進ませるような教え方が必要である (Schunk & Zimmerman, 2007)。また、自己調整学習ができるようになれば、そのときに向上したセルフ・エフィカシーは広く、一般性セルフ・エフィカシーにも般化することが期待でき、ひいては「生きる力」の向上が達成できるものと考えられる。

カウンセリング場面におけるセルフ・エフィカシー

    セルフ・エフィカシーが向上すれば不安が低減することや(鈴木, 2002)、抑うつも改善することが示されている (坂野, 2002)。また、セルフ・エフィカシーの向上が不登校 (前田・坂野, 1987)やチックの改善ももたらすことが示されている (東條・前田, 1988)。