DAMSの妥当性

  1. DAMSの特徴
  2. DAMSの構成
  3. DAMSの実施方法
  4. DAMSの採点方法
  5. DAMSの信頼性
  6. DAMSの妥当性
    (1)構成概念妥当性
    (2)一般成人群、心身症群、精神疾患群の各尺度得点の差
    (3)DAMSのカウンセリングでの変化
  7. 引用文献

6. DAMSの妥当性

(1) 構成概念妥当性
 DAMSとPOMS(横山・荒木, 1994)を大学生・短期大学生・専門学校生の合計578名(男子298名、女子280名)に実施した結果、DAMSの各尺度の構成概念妥当性には問題がないことが明らかとなっている。

 つまり、Table 3に示したように、DAMSの肯定的気分得点とPOMSの活気得点との相関係数は.61であり、DAMSの抑うつ気分得点とPOMSの抑うつ気分との相関は.67であり、DAMSの不安気分とPOMSの緊張-不安との相関は.65であった。また、以上のDAMSとPOMSの以上の類似もしくは同一の気分得点との相関係数と、DAMSとPOMSの異なった気分尺度間の相関係数との母相関計数の差の検定の結果は、Table 3に示したようにすべて1%水準で差が認められた。
 この結果に示されるように、DAMSの各尺度の構成概念妥当性は問題がないことが示されている(福井, 1997)。


(2) 一般成人群、心身症群、精神疾患群の各尺度得点の差
 一般成人群938名(男性488名、女性450名)と心身症群50名(男性15名、女性35名)、および精神疾患群79名(男性28名、女性51名)におけるDAMSの各尺度得点の平均値と標準偏差をTable 4に示した(福井・木津・田村・千丈・奥瀬, 1997;福井, 2002)。

 一般成人群の年齢は、21歳~67歳の範囲にあり、平均年齢は32.7歳(SD=10.2)であった。心身症群は、医師により心身症と診断された患者であり,年齢は17歳~67歳の範囲にあり平均年齢は38.0歳(SD=15.3)であった。各器官系統別および疾病別の患者数の内訳は,循環器系7名(高血圧4名,鉄欠乏性貧血1名,僧帽弁逸脱症候群1名,血管運動異常症1名),消化器系9名(胃潰瘍2名,慢性胃炎1名,慢性肝炎1名,アルコール性肝炎1名,過敏性腸症候群4名),内分泌・代謝系7名(摂食障害7名),神経・筋肉系12名(筋緊張性頭痛2名,筋緊張症2名,腰痛症1名,頸肩腕症候群1名,本態性振震1名,末梢神経炎1名,発語障害1名,顔面神経麻痺1名,多発性関節リウマチ1名,体温調節異常1名),その他15名(睡眠障害12名,アレルギー性鼻炎1名,円形脱毛症1名,蕁麻疹1名)であった。精神疾患群は、医師により精神疾患と診断された患者であり、年齢は18歳~69歳の範囲にあり平均年齢は42.5歳(SD=16.0)であった。疾病別内訳は,うつ病性障害23名,不安障害31名,精神分裂病11名,アルコール依存症9名,身体表現性障害5名であった。
 各尺度得点ごとに群を要因とする1要因の分散分析を行なったところ,すべての尺度得点において群の要因が有意であった(「肯定的気分得点」, F=73.54; 「抑うつ気分得点」, F=59.07l;「不安気分得点」, F=50.54; 自由度はいずれも2と1064,p<.001)。そこで,各尺度得点ごとにHSD法による多重比較を行なった結果,すべての尺度得点において,一般成人群と心身症群,および一般成人群と精神疾患群との間に差が認められた(「肯定的気分得点」, MSe=13.08; 「抑うつ気分得点」, MSe=18.10;「不安気分得点」, MSe=20.10; いずれもp<.05)。このことは,心身症あるいは精神疾患によって医師を受診している患者群の「肯定的気分得点」は,いずれも健常な状態にあると考えられる一般成人群よりも低い反面,「不安気分得点」と「抑うつ気分得点」は一般成人群よりも高いことを示している。
 以上のことから、DAMSは高い臨床的妥当性を有していることが示されている。以上の結果の他、各疾患別の分析などについては福井・木津・田村・千丈・奥瀬(1997)か福井(2002)を参照されたい。


(3) DAMSのカウンセリングでの変化
 カウンセリング過程におけるDAMSの各尺度得点の変化を確認するため、大学生・短期大学生・専門学校生579名(男子236名、女子340名)から実験協力者を募った。実験に協力する意志があり、SDSで神経症の平均値の49以上で、かつSTAI(T-FORM)で段階・(非常に高い)(男子では53以上、女子では55以上)に属する抑うつと不安の高い被験者をスクリーニングした。その結果、合計31名(男子7名、女子24名)が該当した。これらの被験者をランダムに、認知行動カウンセリングを実施する実験群15名(男子3名、女子12名)と、カウンセリングを実施せずに1週間に1回ずつDAMSを実施する統制群16名(男子4名、女子12名)に振り分けた。
 認知行動カウンセリングを実施する実験群の被験者に、1週間に1回ずつカウンセリングを実施したところ、11名(男子2名、女子9名)の被験者に毎週カウンセリングを実施することができた。また統制群では、15名(男子3名、女子12名)に毎週DAMSのみを実施することが出来た。この実験の結果を示したのが、Fig. 2である。認知行動カウンセリングを実施した11名では、肯定的気分は増加し、抑うつ気分と不安気分は低減したことが示された。また統制群では、肯定的気分は増加せず、抑うつ気分と不安気分も低減しなかったことが示された。

 この結果から、DAMSの各尺度がカウンセリング経過に伴う、肯定的気分と抑うつ気分、および不安気分の変化を明確に示すことがわかる。


 Fig. 2 カウンセリングにおけるDAMSの各尺度の変化
 (○が1週間に1回ずつ認知行動カウンセリングを実施した11名の被験者の結果であり、□が統制群としてカウンセリングを実施せずに1週間に1回ずつDAMSのみを実施した15名の結果である。)

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