DAMSの特徴

  1. DAMSの特徴
  2. DAMSの構成
  3. DAMSの実施方法
  4. DAMSの採点方法
  5. DAMSの信頼性
  6. DAMSの妥当性 (1)構成概念妥当性
    (2)一般成人群、心身症群、精神疾患群の各尺度得点の差
    (3)DAMSのカウンセリングでの変化
  7. 引用文献

1. DAMSの特徴

 DAMS(Depression and Anxiety Mood Scale)は、この2~3日間の肯定的気分と抑うつ気分、および不安気分の程度をごく短時間に客観的に測定するための質問紙である。DAMSでは、肯定的気分と抑うつ気分、および不安気分がそれぞれ3項目ずつの合計9項目で測定できるようになっているACL(Adjective Check List)形式の質問紙である。この9項目の質問項目が、6回分で1つの質問紙として構成されている。そのため、1週間に1回ずつ実施すれば、6週間にわたる気分の変動が記録できるようになっている。

 カウンセリングでよく問題となるのは抑うつ気分と不安気分であるが、クライエントの報告のみでは、微妙な気分の変動を数週間にわたって明確に把握するのはむずかしい。その点、DAMSは実施と採点を含めても1回3分程度であり、1枚の質問紙で6週間分の客観的な気分の変動が明確に把握できる。また、うつ病性障害では抑うつ気分のみではなく、肯定的気分の変動もクライエントの状態を把握するには重要である。一般的には抑うつ気分が低下すれば、肯定的気分は増加すると考えられがちであるが、抑うつ気分が低下しても肯定的気分が増加するときとしないときがある(下川, 1996)。そのため、DAMSでは抑うつ気分のほかに肯定的気分も測定できるようになっている。

 ところで、医師がハミルトン尺度などで抑うつと不安の強さを評定すると、抑うつと不安の相関は.40~.50の相関係数となることが報告されている(Clark, 1989)。しかし、既存の抑うつと不安の質問紙で測定すると、相関係数が.60~.70となるものが多く、既存の質問紙の抑うつと不安の弁別的妥当性が低いことが問題であった (Tanaka-Matumi & Kameoka, 1986; Gotlib & Cane, 1989)。しかし、DAMSの抑うつ気分と不安気分の相関は.50前後と、高い弁別的妥当性が示されている(福井, 1997)。

 以上のことから、各セッションの最初に毎回DAMSを実施すれば、クライエントの抑うつ気分と不安気分の変動を適切に把握でき、また当該セッションのすすめかたの参考にもなる。

ページのトップへ戻る