DACS 抑うつと不安の認知行動モデル
2. 抑うつと不安の認知行動モデル
抑うつと不安については、スキーマと自動思考のレベルで内容が異なるという認知内容特異性仮説をベックが提唱している(Beck et. al., 1987)。しかし、この仮説では抑うつと不安に0.50程度の相関があるという事実 (Clark, 1989)を説明することができない。そこで、DACSとDAMS(Depression and Anxiety Mood Scale)(福井, 1997)を用い、共分散構造分析という統計手法を用いて研究したところ、以下のような認知行動モデルが明らかになった(福井, 1998)。

Fig 2 抑うつと不安の自動思考と気分の関係(福井,1998より作成)
つまり抑うつに関しては、自分はだめだという自己否定の自動思考と、嫌なことばかり経験してきたという過去否定の自動思考が、将来きっといいことはないだろうという将来否定の自動思考を生じさせる。そして、この将来否定の自動思考が抑うつ気分を引き起こすのである。
また、不安に関しては、過去否定の自動思考と、人間関係がうまくいかないのは非常に恐ろしいという対人関係脅威度の自動思考が、きっとうまくいかない人間関係に遭遇するという脅威予測の自動思考を生じさせる。そして、この脅威予測の自動思考が、不安気分を引き起こすのである。
この認知行動モデルでは、過去否定が将来否定と脅威予測の両者を引き起こしていることと、抑うつ気分から不安気分が引き起こされるという2つの因果関係から、抑うつと不安に関係があることが説明できるのである。