DACS 認知療法
1. 認知療法
認知療法はペンシルバニア大学医学部の精神科教授のベックが創始した心理療法・精神療法である。ベックは最初精神分析療法をおこなっていた。しかし精神分析療法でなかなかうつ病が治らないことから、自由連想法による治療記録を多数見直した。そして1963年には、うつ病患者と非うつ病患者の自由連想法による治療記録を比較して、うつ病患者には体系的な推論の誤りがあることを指摘した。
さらに、1964年には、うつ病患者の認知の根底に、独特の信念や構造があることを指摘して、これをスキーマと呼んだ。そして、治療において重要なのは、スキーマや認知を変えることだと指摘したのが認知療法の始まりである。1976年には、ベックは以下のような認知の歪みモデルとよばれる、認知行動モデルを発表した。
Fig1 認知の歪みモデル(Beck, 1976より作成)
例えば、「私はすべての人に好かれなければならない。誰かに嫌われたとしたらそれはとてもひどいことだ」というスキーマを持っているAさんがいたとする。このAさんが、Bさんから「Aさん嫌い!」と言われるというネガティブなライフイベントに遭遇し、レッテル貼り(極端な形で一般化してレッテルを貼ってしまう)という体系的な推論の誤りをおかし、「私は皆の嫌われ者だ」という自動思考が頭の中にうずまくようになった。この自動思考が、四六時中頭の中に浮かぶようになり、Aさんは徐々に元気がなくなり、うつ病の症状がでるようになってしまうというのがこのモデルである。