JIBT-R 採点方法


  1. 論理情動行動療法
  2. JIBT-Rの構成
  3. JIBT-Rの実施方法
  4. JIBT-Rの採点方法
  5. JIBT-Rの信頼性と妥当性
  6. 引用文献

4. JIBT-Rの採点方法

 採点をするときは、検査用紙左下のノリ付のすきまから、重なっている用紙をはがす。1枚目の裏が「JIBT-R標準化得点換算表」となっており、2枚目が「JIBT-R採点用紙」となっている。
 まず、2枚目の「JIBT-R採点用紙」で、1〜10、11〜19、20〜26、27〜33、34〜38それぞれの単純合計を算出し、その結果を自己期待合計得点、依存合計得点、回避合計得点、外的無力感合計得点、内的無力感合計得点のそれぞれの下の□の欄に記入する。

Table 2 JIBT-Rの採点用紙

 次に、自己期待合計得点、依存合計得点、回避合計得点、外的無力感合計得点、内的無力感合計得点の各得点を、1枚目の裏にある「JIBT-R(不合理な信念)標準化得点換算表」の上部の合計得点欄に転記する。そして、その合計得点に該当する下の換算表の得点の数値に○をつけ、折れ線グラフのようにつなぐ。○をつけた合計得点の欄を左に見ていくと、左端に標準化得点が示されているので、上部の標準化得点欄に各尺度の標準化得点を記入する。標準化得点(T得点)は偏差値と同じであり、平均が50で、標準偏差が10となっている。
 以上の手続きがすんだところで、検査結果を見ながら所見欄に被検査者の不合理な信念の特徴などを記入する。

Table 3 JIBT-R(不合理な信念)標準化得点換算表

 次のページに、「Fig. 2 JIBT-R(不合理な信念)標準化得点換算表の記入例」を示した。所見欄の記入にあたっては、各信念が標準化得点81以上の非常に強い段階にあるのか、71〜80の強い段階にあるのか、61〜70のやや強い段階にあるのかを参考にしながら、被検査者の不合理な信念の特徴を考えて記入していっていただきたい。60以下の白い部分に○がつけばいくら標準化得点が低くても、その尺度の不合理な信念に問題はないと判定する。これは、JIBT-Rが不合理な信念の質問項目からできていることから、合理的な信念を持っている人ほど、「1.全くそう思っていなかった。」に○をつける人が多いためである。被検査者の不合理な信念の中核要素の特徴がわかれば、論理情動行動療法への導入も容易になるうえ、どういった不適切な認知の変容が必要かわかりやすくなる。

 ところで、JIBT-RとDACSを同時に実施した場合には、以下のように回避の不合理な信念が自己否定の自動思考を引き起こしやすいこと。また、依存の不合理な信念は、対人関係脅威度の自動思考を引き起こしやすいこと。さらに、外的無力感の不合理な信念は、自己否定と対人関係脅威度、さらに過去否定の自動思考という抑うつや不安を引き起こす自動思考のうちの3つの自動思考を引き起こしやすいことが確認されている(福井, 2002; 福井・坂野, 1999)。

              JIBT-R        DACS
              回避      →  自己否定
              外的無力感  →  過去否定
              依存      →  対人関係脅威度

 ただこれも一般的な傾向であり、各被検査者には各被検査者特有の不合理な信念と自動思考との関係があるため、十分にその関連性についてはカウンセリングを通して明らかにしていく必要がある。