認知療法とは、ベックという学者が創始した認知行動療法に含まれる心理療法の1つです。認知療法では、不適応やうつ病およびノイローゼなどについて、以下のようなモデルが設定されています。
 

ネガティブなライフイベント  体系的な推論の誤り

             ↓   ↓

スキーマ → → → → 自動思考  不適応やうつや不安などの症状 

 

つまり、スキーマがネガティブなライフイベントと体系的な推論の誤りの影響を受けて、自動思考を生じ、不適応やうつや不安などの症状を引き起こすというモデルです。

ですが、スキーマや体系的な推論の誤り、そして自動思考というのはあまり聞き慣れない専門用語ですね。それでは、ベックの定義に従って、それぞれの用語を説明していきましょう。

 

まずスキーマですが、スキーマとは人が外的な刺激を受けたとき、その外的刺激をどうとらえるかという枠組みのこととされています。同じ刺激を受けても、人によってそのとらえ方は違いますね。その違いをもたらす元になる、それぞれの人の外的刺激の評価基準をスキーマとよんでいます。ベックによれば、具体的にはスキーマとは、信念やイメージや記憶などであるとされています。

 

次に、体系的な推論の誤りですが、これは不適応を示す人に特有の推論の仕方であるとされています。具体的には、以下のような種類があるとされています。

恣意的な推論  根拠もないのに自分に不利な結論を出す。
選択的な抽象化 ちょっとした小さな失敗をしても、完全な失敗だと考える。
迷信的思考 何か悪いことが一度自分に起こると、何度も繰り返して起こると考える。
過度の一般化 たった一つでも良くないことがあると、世の中すべてそうだと考える。
誇張と矮小化 自分の失敗や短所は過大に考え、自分の成功や長所は過小評価する。
すべし思考  「・・・でなければならない」と考える傾向。
個人化 自分に関係ないとわかっていることでも、自分に関係づけて考える。
絶対的で二者択一的思考 物事は完璧か悲惨かのどちらかしかないといったぐあいに極端に考える。

このような、偏った推論の影響を受けて、不適応やうつや不安などの症状を引き起こす自動思考が生じるとされています。