これまでの説明で、論理情動行動療法と認知療法はとてもよく似た心理療法であることがわかったと思います。それでは、この2つの治療法をもっとはっきりと比較してみましょう。
 
論理情動行動療法のモデルは以下のようなものでした。
 

外的な刺激 → 不合理な信念 → 不適切な感情や行動

また、認知療法のモデルは以下のようなものでした。

   ネガティブな  体系的な
   ライフイベント  推論の誤り
        ↓   ↓
  スキーマ → → → 自動思考 → 不適応やうつや不安などの症状

 

この2つを比較してみると明らかなことは、論理情動行動療法では認知内容の部分が不合理な信念の一つしかないのに対して、認知療法ではスキーマ、体系的な推論の誤り、自動思考と3つに分かれている点です。

ここからもわかるように、認知療法は論理情動行動療法をよりわかりやすくした治療法と見ることができます。

 

エリスの本と、ベックの本を読んでみるとわかることですが、エリスの不合理な信念として扱っている認知内容はベックのスキーマ、体系的な推論の誤り、自動思考のすべてを含めて不合理な信念としています。ただ、不合理な信念の中核は、「〜でなければならない」とか「〜は当然である」といった考え方であると指摘しており、これはベックのスキーマに含まれる認知内容です。

 

ベックもスキーマの部分には、信念を指摘していますが、その他にイメージや過去記憶なども含めています。ですから、スキーマは不合理な信念の中核要素とほぼ同じと理解し、ただ少しスキーマの方が広い概念であるととらえるといいと思われます。

 

実際に、不合理な信念を測定するための質問紙と、スキーマを測定するための質問紙が開発されていますが、両者はほとんど同じような質問紙になっています。

 

このプログラムでは、不合理な信念もしくはスキーマという用語は、外的刺激の評価基準である認知と定義して用いていきます。また、自動思考という用語は、外的刺激の評価結果の認知と定義して用いていきます。